岡山県立図書館

トップページ 図書館ネットワーク 図書館職員の方へ 令和7年度 岡山県子どもの読書活動推進連絡会

令和7年度 岡山県子どもの読書活動推進連絡会 実施報告

テーマ

「多様な子どもたちの読書機会の確保~読書バリアフリーの推進に向けて~」

日時

令和8年2月5日(木) 10:30~16:00

会場

岡山県立図書館 2階 多目的ホール
及び Web会議システム「Zoom」を活用したオンライン

参加者

来場

50名〈公共図10名、学校10名、ボランティア19名、その他教委等3名、講師・取組発表者8名〉

オンライン

13名〈公共図4名、学校7名、ボランティア2名〉

Youtube視聴

13名〈公共図4名、学校9名〉

主催

岡山県立図書館

概要

①岡山県における子どもの読書活動推進について

岡山県教育庁生涯学習課

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 県は、県内の小学生、中学生及び高校生を対象に、令和7年度「子どもの読書の実態に関する調査」を実施した。
 調査の結果、不読率は小学生11.0%、中学生22.6%、高校生45.8%と全校種とも前回より上昇した。主な不読の理由は、「読みたい本がなかったから」及び「他にしたいことがあったから」で、校種進行とともに「本を読む時間がなかったから」の回答割合も増加しており、子どもの主体的な読書につながるよう、読書の楽しさや価値を実感できる環境整備が求められている。一方、マンガ等を含めると、不読者の多くが何らかの紙や電子の文字・活字媒体には接しており、日常的に接している媒体や関心のある事柄を起点に、段階的に読書へつなげる取組の有効性が示唆された。また、不読者の一定数が月1回以上学校図書館を利用しており、発達段階に応じた学校図書館の活用促進も引き続き重要である。
 また、主な本の入手方法は、「学校の図書館で借りた」及び「保護者や親戚に買ってもらった、または家にあった」が多く、家庭が読書の重要な基盤であるとともに、特に小学生にとっては、学校や地域の図書館が身近な読書環境として機能していることが示唆された。
 加えて、紙媒体を中心としつつも、校種進行とともに電子媒体も利用が増加していることから、紙媒体と電子媒体を組み合わせた多様な読書機会の提供を充実させるとともに、現在策定中の県の第2期読書バリアフリー計画もふまえ、多様な読書形態の保障についても推進していく必要がある。
 今後とも、学校図書館等の関係機関、地域及び家庭等と連携しながら、子どもの読書活動推進に取り組んでいきたい。



②取組発表

鏡野町立鶴喜保育園

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 町内の保育園・こども園・幼稚園で共通して「豊かな心と健やかな体を育み、いきいきと遊ぶ子どもの育成」を保育目標としており、読書活動に関しても、子ども達が絵本や物語に親しむ活動の充実や家庭での読み聞かせの大切さの伝達、子ども達が絵本や物語に興味を持てる環境作りなどの目標を掲げている。
 定期的な取り組みとして、ボランティアの協力を得てわらべうたあそびと絵本の読み聞かせを行っている。小道具や実物との触れあいなどの工夫も取り入れながら、子どもが絵本に親しめるよう時間をかけて取り組んでいる。子どもとともに楽しみながら、子どもの好奇心や探究心を育むとともに、職員も知識を広げ、深める研修として、また、保護者にも掲示を通じて様子を伝えるなど取り組みを深めてきた。
 また、毎週好きな絵本を1冊借りて帰り、家庭で親子で読み聞かせを楽しんでもらう取り組みも行っている。他にも、保護者の協力のもと月刊絵本を各家庭で購入してもらい、その本を各組で楽しむ取り組みを通じて、自分の絵本を読んでもらう喜びや興味・知識を深めてもらっている。
 今年度は未実施だが、月に1回程度町立図書館に行って読み聞かせや園にはない本を借りるということも行っていた。
 これまでの実践を大切にしながら、これからも子ども一人一人の学びの芽、読書の芽を育てていきたい。



岡山市立京山中学校

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 京山中学校の年間の本の貸出冊数は全国平均の約3倍となっている。この実績は組織として動き続けるための継承できる設計、4つの柱が支えている。
 柱1「朝読書」は毎朝10分、ただ読む取組であり、評価をしないことで日常に本を組み込み、読書へのハードルを下げる役割を担っている。
 柱2「授業実践」では単元のねらいと評価を設計し、図書館を学習の場にする教科担当と、適切な資料の用意や環境整備を行う学校司書・司書教諭の役割分担を明確にすることで継続を可能としている。授業で作製したPOPを書店等へ展示するなどの広がりも見せている。
 柱3「委員会活動」では、文化発表会でのしおり制作や読書週間の企画などを通じて、生徒を読書の場を「つくる側」にしていくことで、学校の空気が変わる効果があった。
 柱4「展示(掲示)」では、展示の形を共有し、教科とも連携しながら内容を工夫することで「本との偶然の出会い」を意図してつくる仕組みが紹介された。
 続く形で仕組みを作り、残すことで取組が動き続けることから、特別なことを増やすよりも、まずは小さなことから1単元、1企画から始めてみることが提案された。



岡山県立岡山城東高等学校

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 通る人の多い恵まれた立地にある城東高校図書館では年間約300時間の授業利用がある。活発に利用される図書館の事例が「つながり」をテーマに発表された。
 まず、探究とのつながりでは、3年間を通じて取り組まれる「グローバル」の授業について、図書館が関わり段階的に文献調査につなげていく取組と探究ポータルサイトが紹介された。探究ポータルサイトでは論文や過去の研究、活用できるデータベースなどが一元化されており、情報を一元化することで生徒が迷わずに探究に取り組める仕組みができている。
 次に、授業とのつながりでは国語・歴史総合・保健・音楽・美術等の各教科ごとに図書館の支援内容が検討され、授業内での活用・展示やパスファインダーの作成等に留まらず、成果物の掲示・共有を通じて生徒や先生の交流にまでつなげる取り組みが紹介された。
 最後に、他校とのつながりとして工業高校とのPOPたて共同製作や複数校でのコラボイベントの開催など、その取り組みを一校単独ではできないところまで広げている事例が紹介された。



吉備中央町図書館

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 吉備中央町図書館には地域の昔話を基にデザインされた2体のキャラクターがおり、館内の壁面飾り等で活用されているほか、カウンターで配布しているオリジナルの塗り絵や移動図書館などにもデザインされている。
 館内展示は毎月入れ替えることでいろいろな本を手に触れてもらう機会となっているが、職員それぞれの個性が活きるものとなっている。
 子育て世代向けの取り組みとしてブックスタート事業やセカンドブック事業を行っているほか、赤ちゃん絵本貸出セットや手作りのパズルなどを提供しており、喜んで利用してもらっている。
 子供向けイベントとしては工作とお話を組み合わせた体験ブッククラブや、子どもの読書週間に合わせたイベントなどをしている。また、年に1回大きなイベントとして絵本作家によるワークショップや人形劇の上演などをする図書館フェスティバルを行っている。
 学校との連携として、持って行った図書館の本をその場で借りてもらう出前図書館や、図書館に来てもらって図書館の説明や読み聞かせなどを行う学校訪問、また職場体験の受け入れなどもしている。
 また、郷土愛を育むための取り組みにも力を入れており、郷土の絵本を出版したり郷土のかるたを作成してイベントを行ったりもしている。
 これらの様々な取り組みを通じて、多くの方に来館してもらえる図書館になるよう努力していきたい。



倉敷ストーリーテリングを楽しむ会

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 1995年に倉敷市内の有志で結成し、現在の会員は12名。昨年30周年の節目の年を迎え、初心に返って学びなおそうとストーリーテリング入門講座を倉敷市立中央図書館と共催で開催した。取り組んでいるのはおはなしを覚えて、ことばだけでおはなしを語るストーリーテリングで、主に倉敷市内を活動拠点とし、幼稚園・保育園や小・中学校、倉敷市立図書館など多くの場所で活動している。子どもを対象とした活動以外にも、年に2回倉敷市立中央図書館で大人のためのおはなし会を実施している。
 おはなし会に参加してくれた子どもたちが、おはなしを聴きながら想像して楽しんでくれる様子に、語り手はいつも力をもらっている。語り手としての会員たち自身も何よりおはなしを聴くことを楽しみながら、おはなしの楽しみを子どもたちと分かち合いたいと願い、研鑚に励んでいる。
 活動内容の紹介の後、わらべうた「てんやのおもち」、おはなし「鳥のみじい」(『子どもに語る日本の昔話②』稲田和子・筒井悦子/著、こぐま社)の実演が行われた。



③ 講演『読書に困難を抱える子どもたちの読書環境の現状と課題 -図書館ができること-』

筑波大学附属視覚特別支援学校 宇野 和博 氏

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 本日は、通常の活字が読めない・読みにくい子どもたちのために何ができるのか、そして「読書バリアフリー」とは何を意味するのか、皆さんと考えてみたい。私自身、成人後に徐々に視力が低下し、現在はほぼ全盲である。恥ずかしながら、盲学校で教壇に立つまで視覚に障害のある生徒と接した経験がなく、そこで初めて、読むことに大きな困難を抱える弱視の存在を知った。こうした困難は声が小さく、外部からは非常に分かりにくいため、見過ごされがちである。
 学習の基盤となる教材のうち、テストやプリントは教師の裁量で字体や文字サイズを変更できるが、最も基本となる教科書は変更が難しい。そのため、私は1998年頃から拡大教科書を求める活動に取り組んだ。提供に至るまでには、著作権、無償供与、安定的な供給体制の確立という壁があったが、理解ある国会議員などの支援もあり、2008年に教科書バリアフリー法が制定された。これにより、2011年以降はすべての教科書会社が義務教育の拡大教科書を発行するようになった。
 しかし、この運動の中で、問題集や参考書、一般書籍など教科書以外の資料をどうするかという課題が残った。また、視覚障害以外の理由で読書が難しい人の存在も明らかになった。こうした問題意識から、活動は「教科書バリアフリー」から「読書バリアフリー」へと広がっていった。幸運にも、2013年に国連でマラケシュ条約が採択され、印刷物の判読に障害のある人の読書環境整備が国際的に求められたこと、さらに障害者差別解消法の制定などが追い風となり、2019年の読書バリアフリー法の制定へとつながった。
 では、障害のある子どもたちがより読書を楽しめるようにするには何が必要だろうか。まず、読書に困難を抱える障害にはどのような種類があるのかを理解し、それぞれに応じた支援方法を知ることが重要である。弱視といっても、視野が狭く小さな文字の方が読みやすい人もいる。上肢に障害があったり寝たきりであれば、電子書籍やページめくり機が必要となる。分掌表現を分かりやすくしたLLブックや布の絵本、手話つきDVDなども、まだ十分に知られていない。同時に、障害や特性に応じた「読める・読みやすい図書」を作ること、そして作成した図書資源を蓄積し、必要とする人に届け、実際に読書できるよう支援する一連の仕組みが欠かせない。例えば、サピエ図書館や国立国会図書館の「みなサーチ」が数多くのアクセシブルな図書データを所蔵していたとしても、それが必要とする人に届かなければ絵に描いた餅である。読書障害者に近い図書館においては、当事者に寄り添った支援が求められる。
 読書に困難を抱える子どもたちの支援体制に関し、現在でも「買う自由」と「借りる権利」のいずれにおいても選択肢はまだ限られている。一部の出版社は One Source, Multi Use の理念の下、徐々にテキストデータの販売を始めている。出版業界全体では ABSC(アクセシブル・ブックス・サポートセンター)を設立し、図書館へのデータ提供の実証実験を進めている。国立国会図書館は、これまで画像でしか保存していなかったデータをテキスト化し、「みなサーチ」を通して障害当事者に配信している。その数は実に347万点に上る。また、電子図書館ガイドラインを作成し、地域の図書館や大学図書館等が提供する電子図書館サービスのアクセシビリティ向上を図っている。国立情報学研究所は、全国の大学図書館や障害学生支援室で作成されたテキストデータを一覧できるシステムを構築した。
 しかし、こうした情報は視覚障害者以外のディスレクシアや身体障害のある読書障害者には、まだ十分に届いていない。一部の公共図書館や学校図書館では、バリアフリー図書の紹介コーナーを設置し、通常の活字図書の読書をあきらめた人に新たな読書手段を紹介し始めている。こうした取り組みは、家族や周囲の人を通して当事者に伝わることが期待される。
 ある公共図書館では、バスに本を積み「移動図書館」として来館が困難な市民へのサービスを開始した。乳幼児健診の際に絵本をプレゼントする自治体もある。読書障害者への情報発信のあり方は、将来的には障害者福祉全体の課題であり、潜在的な情報保証への試金石ともいえる。読書や情報を求めるニーズにどうアプローチするか、点字図書館や ICT サポーターなど他機関と連携し、申請を待つのではなく、プッシュ型で情報を提供していく行政サービスの理想像を展望したい。「すべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」という文言を、単なる行政上のきれいごとで終わらせるのではなく、実のあるものにしていきたい。そのためには、多くの人がアイディアを出し合い、それが広がっていくことが重要である。皆さんとともに知恵を絞っていきたい。



(お問い合わせ) 
岡山県立図書館 図書館振興課 図書館支援班
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FAX 086-224-1208