岡山県立図書館基本構想(答申)



は じ め に

 最近の社会動向は、生涯学習社会の進展等により、人々の生活意識が心の豊かさを重視して、ゆとりと生きがいを求めるようになってきている。また、高度情報化社会の急激な進展の中で、学術・経済・産業、その他生活の全般にわたり、各種情報を収集し、整理、活用することの重要性が高まってきている。
 また、岡山県においては、情報ハイウェイ構想の具体化により、さらに一層情報基盤の整備が進むものと考えられる。
 このような背景の中で、今後ますます多様化し、高度化・個性化していく県民のニーズに対応し、県域の教育・文化の拠点となり、県民の豊かなライフスタイルを支援していくための施設として県立図書館の整備、充実は欠かせないものとなっている。
 しかしながら、現在の岡山県総合文化センター図書館部門は、これまで県立図書館としての機能を果たしてきたが、現有施設は狭隘、かつ老朽化にともない、新たな変化に対応する十分な機能を発揮できない状況にある。
 本委員会は、これらのことを念頭に置いて、県民のニーズに即応した、21世紀にふさわしい岡山県立図書館の在り方について検討を重ねてきたが、ここにその結果を「基本構想(答申)」として報告する。
 今後、この答申をもとに、広く県民に利用され親しまれる県立図書館が早期に建設されることを切に期待する。

1 岡山県立図書館の目指すべき方向

 県立図書館は、全県民に対してサービスを提供することが基本であり、来館者に対する直接的サービスと、市町村立図書館を介しての間接的サービスを行うとともに調査、研究機能を備えた県域の中核的な図書館としての役割を果たす必要がある。
 また、岡山情報ハイウェイなど情報基盤整備の進展にともない、短時間で広範囲な地域への情報伝達や情報入手が可能になる状況を踏まえ、県内の資料・情報提供の中核施設として、従来の図書資料等によるサービスはもとより、岡山情報ハイウェイ上への情報発信の中心となって、県民の豊かな情報生活を積極的に支援していく必要がある。
 こうしたことから、新県立図書館は県民のニーズと時代の変化に適切に対応しながら県民の自主的な学習・文化・余暇活動を支援する、21世紀にふさわしい施設として整備する必要がある。

2 基本的性格について

(1)県民に開かれた図書館
 県民の参画でつくる開かれた図書館とし、県民が必要とする資料・情報を、すみやかに検索、利用できる機能と蔵書構成、及び豊かな読書や各種文化活動を行うことができる環境を整備する。

(2)県域の中枢となる図書館

 県内の公共・大学・学校図書館等をはじめ、国立国会図書館や都道府県立図書館等との連携と協力をもとにネットワークを確立して、その中枢となる。

(3)調査・研究センターとしての図書館
 高度情報化や生涯学習社会の進展にともない、県民の要求も多様化・専門化することが予想され、これら知的ニーズに応え得る調査研究援助機能を備える。

(4)メディアセンターとしての図書館

 国内のみならず国際的視野に立った幅広い資料・情報を収集、加工し、さらに岡山情報ハイウェイ時代におけるメディアセンターとして、他の情報関連メディアの積極的な導入も図りながら、県下各界各層への多様な情報の受発信基地となる。

(5)資料保存センターとしての図書館
 県民の知的財産である資料・情報を収集・整理し、保存して後世へ継承するとともに、広域的に有効な活用を図る。

3 基本的機能について

(1)役割と機能

 ア 市町村立図書館を介した県民へのサービス
  県立図書館の役割は、全県民に対し平等なサービスを提供することが基本である。このため、来館者に対しての直接サービスとともに、住民の身近にある市町村の図書館を通じてのサービスを積極的に行う。その場合、市町村立図書館とネットワークを構築し、資料の検索・予約さらには搬送がスムースに行えるようにする。

 イ 図書館未設置地域へのサ−ビス
  図書館が未設置の町村に対しては、図書館が設置されるまでの間、県立図書館は、公民館図書室等に対しての支援を通してサービスを補完する。

 ウ 来館者への直接サービス
  生涯学習の重要性が増している現在、県民の学習、調査研究、日常生活上の情報要求に応えられるよう、来館者への直接サービスに努める。

 エ 県域図書館ネットワークの要
  県内公共図書館、学校図書館、大学図書館、専門図書館、公民館図書室及び試験研究機関等と連携をとり、県内に有機的な図書館サービスができるようネットワーク化を推進し、その要となる。また、国立国会図書館が推進するパイロット電子図書館総合目録ネットワークの構成員として、他の都道府県立図書館等とも連携し県内の図書館に充実した支援ができる体制をつくる。

 オ 資料の保存センター
  収集された資料は、原則としてすべて保存する。県立図書館は、自館の資料保存だけでなく、全県的立場における資料保存図書館(デポジット・ライブラリー)の役割を果たす。

(2)サービス計画

 ア 図書・資料サービス等

 (ア)市町村立図書館の求めに応じて、資料を提供するとともに、県民への直接サービスとして個人に対する貸出しを行う。
 (イ)市町村立図書館の児童・青少年サービス充実のために、児童書等に関する情報の収集、伝達、調査、研究などの支援を行う。児童等に対する直接的なサービスも実施する。
 (ウ)AVサービスや電子図書館サービスを実施する。
 (エ)図書館未設置町村への支援を計画的に行う。

 イ レファレンス・サービス等

 (ア)レファレンス資料の充実を図る。
   館内の図書・資料配置及びレファレンス・サービス(調査・研究の援助)の提供体制は、原則的に主題別部門制を取り入れる。
 (イ)各種のネットワーク手段を活用した、レファレンス・サービスを行う。

 ウ 各種データベースの作成

 (ア)図書館サービスに不可欠な各種のデータベースを作成し、岡山情報ハイウェイを活用して、県民はもとより、広く県外にもオンラインで提供する。
 (イ)岡山県内の分散型総合目録システムの構築に向けては、県内の公共図書館の協力を得ながら、調査研究を深める。

 エ 岡山情報ハイウェイへのアクセス

  岡山情報ハイウェイやインターネット上に公開される様々な情報へのアクセス機能を提供する。その場合、専用のコーナーを設けたり、利用者の携帯端末からのアクセスも可能にする。

 オ 図書館活動の普及・啓発と学習・文化環境の整備

 (ア)展示会、講座、講演会等を企画し県民の学習・文化的ニーズに応えるとともに図書館活動の普及と啓発を図る。
 (イ)県域の読書推進活動等の研修・交流の援助を行う。
 (ウ)図書館未設置の町村に対し、図書館づくりの機運を醸成する働きかけを行う。

(3)資料の収集・保存方針

 ア 資料の収集方針

  県立図書館は、県民からのあらゆる資料要求に応えるための県内における資料の蓄積の最後のよりどころとして、また、市町村立図書館のサービス活動を支える資料情報センターとして、豊富な蔵書を持たなければならない。このため、図書、逐次刊行物など多様な資料を幅広くかつ系統的に収集する。
  また、調査研究図書館として電子化されたものを含めて参考図書類の収集整備を図る。
  専門図書、専門的な雑誌・新聞、県に関する行政・郷土資料、障害者のための資料、外国語資料を主として収集する。
  岡山県の特性を考慮した分野については重点的な収集を行い、全国的にみても岡山県立図書館の特色となるものとして、「吉備文化資料」「交通文化資料」を整備する。
  なお、障害者のための資料は、関係機関との役割分担を考慮しながら収集する。

 イ 資料の保存方針

 (ア)遡及的調査に応え得るよう、収集された資料は、全タイトル1点はすべて保存する。自館の資料保存だけでなく、市町村立図書館からの移管や寄託を受け、全県的立場における資料保存図書館(デポジット・ライブラリー)の役割を果たすものとする。
 (イ)保存にあたっては原形保存を原則とするが、一部の資料については、マイクロフォーム化、電子化も進める。
 (ウ)県総合文化センターで収蔵している古文書については、将来整備される予定の文書館における体系的な保存に委ね、県立図書館と文書館の明確な機能分担を図る。

 ウ 蔵書計画

 (ア)収蔵能力
   県立図書館が担うべき資料の保存機能に対応して、図書換算で200万冊程度の収蔵能力(今後20年程度収蔵可能)をもった書庫スペースを確保する。
   なお、将来を見通した書庫の拡張スペースを確保しておく必要がある。
 (イ)開架能力
   開架スペースの収蔵能力は30万冊程度とする。
 (ウ)整備計画
   新館開館に向け必要な資料の計画的整備を図る。
   また、市町村立図書館支援のための資料を収集し、かつ、全国的にも充実した資料を誇れる図書館となるよう、資料の収集整備体系(新刊図書にあってはその70%程度の収集)を確立し、開館後もこれを維持していくことが重要である。

(4)コンピュータシステムとネットワーク

 ア コンピュータ・ネットワークの利用

  図書館におけるコンピュータ・ネットワークの利用は、利用者にとって、県内における情報入手の地域格差を減少させるための有効な手段である。本県は、先進的な情報基盤である岡山情報ハイウェイを有しており、これを活用してのネットワーク化を図ることは極めて重要である。
  県立図書館は、このネットワークを十分に活用することにより、各種の先端的な図書館サービスを提供すべきであり、その保有する豊かな情報資源を有効に活用することにより、岡山情報ハイウェイの中で、情報発信の拠点としての役割を担うべきである。
  ネットワークを利用して提供できるサービスの例としては、次のようなものがある。県立図書館は、これらの各種サービスを計画的に順次実現していく必要がある。

 (ア)総合目録
 (イ)利用案内/催し物案内/図書館ニュース
 (ウ)新刊案内
 (エ)資料の予約・リクエスト
 (オ)他の情報源への案内(リンク・リスト)
 (カ)さらに充実したデジタル岡山大百科
 (キ)レファレンス・サービス(レファレンス質問データベースの構築、図書館員との対話)
 (ク)既存資料のデジタル化
 (ケ)マルチメディアを含む多様な情報サービス(電子図書館の実現)

  これらの情報を提供するシステムについては、24時間アクセス可能にするとともに、システム全体の統一性を図り、初心者にとっても使いやすいものである必要がある。また、システム構築にあたっては、情報の安全性の確保、利用者のプライバシーの保護などに留意する必要がある。
  なお、既存資料のデジタル化、サーバーへの搭載にあたっては、著作権法改正の動向に留意しつつ、適切な著作権処理の仕組みを考えておく必要がある。

 イ 図書館ネットワークの構築

  県立図書館の資料を補完し、他の図書館、その他の情報源の有効な利用を図るために、県内公共図書館とのネットワークはもとより、国立国会図書館、都道府県立図書館、大学図書館等とのネットワークを充実させる必要がある。このようなネットワークの構築は、他の図書館の情報の利用と共に、県立図書館のサービスを、県民が県内のどこにいても利用できるようにするためにも必要である。
  図書館ネットワークの構築においても、岡山情報ハイウェイは、必須の情報基盤となる。この際、総合目録の利用、資料の入手など、これらのネットワークによるサービスは、遠隔の利用者にとっても、できるだけ直接利用できるように、県立図書館がゲートウェイ機能を提供するようにすべきである。
  なお、自宅からアクセスするための設備を持たない利用者、著作権法上館内でのアクセスしかできない資料の利用、インターネット上の各種情報源へのアクセスのために、県立図書館の館内には、利用者端末コーナーを設けると共に、十分な数の情報コンセントを備える必要がある。
  また、県民が自宅や職場の近くで、県立図書館および他の図書館のサービスを簡単に受けられるように、できるだけ多くの地点に、端末を有するアクセス・ポイントを設けるための支援を行う必要がある。

4 規模及び構造について

(1) 規  模


 ア 建物の面積

  県民の直接利用や調査研究機能等を持つ県立図書館は、高齢者や障害者の利用への配慮と長時間滞在するためのゆとりの空間を確保することが必要である。したがって、延べ床面積等の規模は、人口規模も勘案し、少なくとも最近建築されている他の県立図書館の規模と同程度の面積(延床面積、15,000u〜20,000u程度)を確保することが望ましい。

 イ スペース

 (ア)主題別部門制は、次の6部門程度とする。
   @一般参考部門     A人文科学資料部門   B社会科学資料部門
   C科学技術資料部門   D岡山県関係資料部門  E児童資料部門
 (イ)重点的に収集する「交通文化資料」、及び「外国語資料」は、別にコーナーを設け配架する。
 (ウ)研究室を含め、様々な利用に対応できるように、閲覧席は500席程度(ブラウジング席を含む)が必要である。
 (エ)文化的空間の確保
  県民の自主的な学習文化活動と県立図書館の主催する行事や研修の場として、集会室、情報化対応スペースをはじめ各種の文化的空間を確保する。

(2) 構  造

 ア 建築の基本方針

  建築計画や設計にあたっては次の点に十分配慮する。

 (ア)建築にあたっては、近接する史跡等の景観に十分配慮した配置や規模構造とする。
 (イ)外から見て、誰もが図書館とわかる建築で、入口に段差などが無く利用しやすく、親しみやすい図書館であること。また、館内は十分に明るく、見通しのきくゆったりとした感じが必要である。
 (ウ)一層あたりの面積が大きく、しかも各階がわかりやすくて合理的な平面構成になっており、利用者が使いやすく、職員が働きやすい全体として低層(3階〜4階)の建築とする。
 (エ)図書館の発展、利用の変化に対応できるよう、書庫の拡張スペースを確保することはもちろんのこと、全体として固定壁の少ない平面構成とする。
 (オ)高齢者や障害者等の利用に支障のないバリアフリーの建築にする。また、外国人を含め、すべての利用者にわかりやすい図書館を目指す。

 イ 駐車場の整備

  県立図書館の建設場所は、市内中心部であり公共交通機関の便もよいことなどを勘案し、一定の駐車スペース(200台程度)を確保する。

5 その他関連事項

(1)組織・機構

  サービス理念、サービス計画、専門技術などについての継続的な研修を組み込み、組織全体として利用者と職員の接点を重視した機構とする。
  また、図書館の館長選任にあたっては、図書館運営に熱心に打ちこめる専門的知識を有した人で、一定期間以上携われる人が望ましい。
  図書館業務へのボランティア制度の導入については、業務の基盤を維持していくため必要数の正規職員を配したうえで、児童サービス分野や対面朗読等受け入れ実績のある分野を中心に一層の充実を図る必要がある。

(2)図書館資料整備について
  県立図書館の資料整備にかかる資料購入費予算については、全国レベル以上の確保が必要であり、かつ、継続して措置することが望ましい。

(3)県内図書館の振興について
  県内の町村立図書館の設置比率は29%であり、全国平均の32%を下回っている状況である。そのため、図書館未設置町村の図書館建設に向けての支援を目標とした、図書館振興策の策定とその実施が望まれる。
  また、巡回協力車による巡回は、公共図書館を中心に行い、それを核としてその効果が県全域に波及するよう考慮する。

(4)岡山県総合文化センターの再編整備について
  市内中心部にあって公共交通の便もよく、長年県民に親しまれてきた岡山県総合文化センターについて、図書館部門が独立した後の活用方法について早期に検討をすることが必要である。

(5)文書館について
  図書館と密接な関係にある、文書館の早期建設が望まれる。