岡山県立図書館

トップページ 図書館ネットワーク 図書館職員の方へ 令和5年度 岡山県子どもの読書活動推進連絡会

令和5年度 岡山県子どもの読書活動推進連絡会 実施報告

テーマ

「子どもと本を結ぶ ~子どもの発達と読書について考える~」

日時

令和5年7月27日(木) 10:30~16:00

会場

岡山県立図書館 2階 多目的ホール
及び Web会議システム「Zoom」を活用したオンライン

参加者

【来場】21名〈公共図4名、学校9名(うち小学校5名、中学校3名、高等学校1名)、ボランティア2名、講師・取組発表者6名〉

【オンライン】15名〈公共図6名、学校1名(高等学校1名)、ボランティア8名〉

主催

岡山県教育委員会

概要

①岡山県における子どもの読書活動推進について

岡山県教育庁生涯学習課

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 県は、第4次岡山県子ども読書活動推進計画に基づき、不読率の低減を目標に掲げ、中学生向けの事業に特に重点的に取り組んできた。
 昨年度は子どもの読書環境に関する実態調査を実施し、不読率は、小・中学生は前回調査より低減したが、高校生は悪化していることがわかった。また、回答結果から、子どもたちの発達段階に応じて読書へ誘うアプローチを変える必要性があることがわかった。
 電子書籍について尋ねた項目では、小・中学生及び高校生のいずれもニーズは5割を超えており、県内公共図書館においても、今後、導入を検討することが望まれる。県教委では、令和3・4年度にコロナ交付金を活用してモデル的に、中学生向け「電子図書館おもしろe読書辞典」を展開し、約半数の学校が利用、14,000件超の貸出実績があったが、ランニングコストや需要と供給のミスマッチなどの課題もあったので、導入検討の参考にしてほしい。
 今後も引き続き、学校は読書活動の推進、図書館は読書環境充実のための支援、行政は学校間及び学校と公共図書館の連携促進や継続的な実態把握と分析に努め、それぞれが連携しながら取り組んでいきたい。



②取組発表

岡山市立御南小学校

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 中学校区の研究主題を基に「豊かなつながりの中で自分の考えを広げたり深めたりする」を研究テーマに掲げ、子どもの知的創造をひろげる学校図書館をめざした取組を行っている。主な取組は6つ。①委員会活動では、5・6年が所属し、低学年への読み聞かせや給食時間の放送でおすすめ本等の紹介をしている。また、校内読書集会で分類ビンゴ・しおりコンクールを行ったり、昨年度は1月に福袋を実施したりした。
②在校生の保護者を中心とするボランティア(ききみみうさぎ)が、朝の学習の時間に読み聞かせに来てくれている。本だけでなく、地域の方との出会いも子どもたちの本との出会いに繋がっている。
③図書館には、いつも子どもたちの作った作品などを掲示し、様々な学年の活動を見て触れられるよう司書が環境を整備している。他学年の活動を見て、やってみたい!調べてみたい!と、司書に本の場所を聞く児童もいる。
④週1時間の図書の時間の活用にも取り組んだ。司書と連携して授業に関連する書籍の紹介や読み聞かせをしたり、同じ作者の作品を集めてブックトークを行ったりした。
⑤実際の授業では、資料を使って末尾を意識した授業づくりに重点を置いている。1学年の国語科の実例「子どもをまもるどうぶつたち」では、単元計画、授業準備の各段階で、本校の研究テーマに沿って、大学教授に助言をもらいながら進めた。
⑥以上のような取組を進める中で、年間指導計画を作成し、年度末には各学年で検討・修正し次年度に活かしている。今後も、子どもの読書活動の推進ができるよう司書と教師の専門性を発揮し、連携を深めていきたい。



奈義町立奈義小学校

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 令和元年から週1回「図書の時間」授業を実施している。全校児童がクラス毎に学校図書館を利用して、学校司書による読み聞かせやブックトークを行い、図書の貸出を行っている。自分で必ず1冊選ぶこととしているため、結果的に不読率は0%となっている。
 また、学校支援ボランティア3団体による読み聞かせなどを、始業前の10分程度、学年別に月2回程度実施している。
 令和3年7月からは、保育の分散化、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から放課後児童クラブと連携し、小学校の図書室を開放している。効果として、館内の蔵書を宿題や調べ学習に活用したり、自由な読書につながったりしており、児童による学校図書館の発展的な活動に繋がっている。
 令和4年度からは、他の授業時間数との関連で「図書の時間」が減る5年生を対象に、町立図書館と連携し、おすすめブックリストを作成し、児童が選んだものを贈るセカンドブック事業を実施している。事業実施前と比較すると対象学年の貸出冊数が増えており、読書への興味関心を高めることに繋がっている。
 これらの取組を通じて、図書室の利用率も向上している。図書室に行けば、読みたい本がある、入手してくれるという児童の学校図書館への期待感の現れと考えられる。
 後も子どもの読書に関わる様々な方々と協力しながら、切れ目のない子供の読書環境づくりに取り組んでいきたい。



岡山県立高梁高等学校

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 図書館教育・読書活動の充実・活性化、具体的には貸出冊数の伸長や未読率の改善を目指し、校内外で幅広い取組を行っている。
 授業との連携では、家政科は、保育コースの授業で図書館蔵書を参考に作成した生徒の自作絵本を展示したり、食物調理コースの授業で蔵書から調理レシピを選んだりしている。国語科は新入生向け図書館オリエンテーションを、英語科は令和元年度から蔵書を利用した多読活動を行っている。
 地域との連携では、高梁市図書館との関わりを中心に活動しており、同館に生徒作成のポップ展示や、同館併設書店でのブックハンティングを行っている。また、市図書館主催マルシェに参加したり、市内ひな人形メーカーから織物端切れの提供を受け、しおりとして再生して同館で配付したりしている。
 読書LHRでは、本のプレゼンでクラス投票トップに選ばれた生徒について、生徒の読書プレゼン動画を作成して全校に配信し、また生徒の選んだ本を「推し本」として市図書館に展示した。
 図書委員会活動では、移動図書館で二次元コードを利用して蔵書の紹介文の閲覧や予約ができるサービスを提供し、予約蔵書の配達も行った。また、学校祭の委員会展示で作成した本校の歴史に関する発表物を、県立図書館のティーンズコーナーに展示した。
 こうした取組が貸出冊数の伸長や校内独自の未読率の改善につながった。今後も生徒と本とのよき出会いの場となるよう、積極的に校内活動や地域との連携に邁進し、魅力ある学校図書館を目指したい。



玉野市立図書館

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 平成29年4月に新たなまちの賑わい創出拠点として、ショッピングモール2階に移転リニューアル開館し7年目となる。
 ボランティアによる月2回のおはなし会に加え、図書館職員が毎日16時から15分程度「まいにちおはなしかい」を実施している。夏休みの調べ学習に資する人気の事業として「玉野海洋博物館連携講座」や「子ども司書養成講座」やポプラディアを使用した調べ学習支援イベントなどを実施している。
 また、公民館との融合施設であることを活かして、料理実習室を活用した本の読み聞かせの後に絵本に出てきたお菓子を作るイベントなども実施している。
 アウトリーチ活動としては、移動図書館車めばる号による市内公園での出張サービスや地区自治会主催イベントに協力参加している。
 その他、初めての読み聞かせにオススメな幼児絵本10冊をセットにしたあかちゃんパックの作成と提供や併設のミュージアムと連携した市内在住のイラストレーターとのコラボ企画、こどもプログラミング特別講座や図書館ビンゴ、笑い文字体験講座など、様々な事業を実施しているが、全ての事業で関連本コーナーを設置し、貸出に繋げている。今後はブックリストの作成にも取り組んでいく。
 今後も、まちの賑わい創出拠点「つどう」「まなぶ」「むすぶ」誰もが訪れたくなる施設を目指して、利用促進・読書推進に努力していきたい。



勝央民話を語る会ちゃんちゃんこ

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 平成19年に発足して16年目となる。子どもたちに関わる主なところは、資料網掛け部を参照。
 小学校での朝読の時間や放課後児童クラブ、図書館のイベント等で民話を語っている。
 平成29年の岡山県読書推進表彰の受賞をきっかけに、これからは子どもたちと一緒に民話の伝承ができればと思い、子ども語り部養成講座を5回実施し、小学生13人が参加した。翌年、発足10周年記念のむかし話を楽しむ会では、養成講座の卒業生3人が語り部をしてくれた。
 令和2年からコロナの影響で活動が制限されたが、昨年度からは、むかし話を楽しむ会を再開することができ、新たに2人の高校生が発表してくれた。最初はぎこちなく硬い表情だったが、回を重ねる毎に人前で語る自信や楽しさを感じてくれたようだ。
 民話は方言を織り交ぜながら語るが、口伝えのみならず絵本や読書になって伝わるものなので、民話と本はとても深い関係にあると思っている。
 これからも子どもたちが本に親しみを持ってくれることを願いつつ、活動を続けていきたい。
≪民話紹介≫



③ 講演『子どもと本を結ぶ ~子どもの発達と読書について考える~』

大正大学 教職支援オフィス教授
     附属図書館長 図書館情報メディア部長 稲井 達也 氏

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 大きく変化する社会に生きる中、コロナで断絶された「つながり」の再生には、図書館は重要な場である。誰もが安心して訪れることができる「学びのコミュニティ」になっていかねばならない。
 読書や図書館に関係する法律は近年様々施行されたが、法の理念に現実が追いついていない現状がある。電子書籍サービスなどのデジタル化や特別支援学校の読書環境整備など大きな課題である。今後は、教科等の学びに生きる読書指導の充実が求められており、多様な子どもたちにアクセシブルな読書機会の提供や、これまで大人が主導してきた読書活動の取組を子ども主体に切り替えていくことも必要だ。
 昨年6月から全6回開催された『令和4年度子供の読書活動推進に関する有識者会議』では、論点整理として、4つの事項が示されたが、委員で議論した主なものは、読書格差の解消や電子書籍の利用と発達段階の考察など。議事録も公開されているのでご覧いただきたい。
 また、学校図書館と公共図書館等とのネットワーク化なども議論され、それぞれが限られた予算のなかで連携・協働により、子どもたちの読書環境づくりにおいて有効活用していくことが求められている。
 こうした議論やパブリックコメントを経て「論点のまとめ」が公表されているが、その中でいくつか挙げたい。
 高校生の不読率低減に関しては、数値は低いものの、本当に読書離れが進んでいるのか。数値に現れないものをどうくみ取って教育に活かしていくかを考えることも必要だ。
 基本方針の中では、「デジタル社会に対応した読書環境の整備」が掲げられたが、GIGAスクール構想による端末の普及で学習指導上の課題も出てきている。
 また、教育委員会の人材育成も重要だ。指導主事の業務は多岐に渡り、必ずしも専門知識のある方が担当をしているとは限らない。図書館の利活用や読書指導の経験豊富な方が一現場に留まらず、県全体の取組に力を発揮していただくことも重要だ。そして、校長はそれぞれの学校図書館の館長でもある。主体的・対話的な深い学びの実現のためには、図書館の活用は不可欠だ。
 どんなに良い本が揃っていて、本の数が多くても、どんな人がそこに関わっているかが最も重要だ。どう子どもたちに本をつないでいくか。担任の先生、司書教諭、司書、ボランティアも含めて「人」が関わっていくことが重要だ。
 子どもの変化と読書環境に関しては、教育心理学者の阪本一郎氏が読書の発達段階説に絞った学説を出されているので紹介し、発達段階の話からZ世代について考える。承認欲求が強く、SNSで頻繁につながっており、周りより目立つのは好きではないようだ。また、LGBTQなど多様性への理解があり、大人よりも社会貢献への意欲を持っている。Z世代というと良い印象がないかもしれないが、彼らは堅実で真面目で、自分の考えをしっかりと持っている。これからの社会を任せられる人材だと感じている。
 読書を広い意味での情報活用と捉え、Z世代の情報活用の特徴を見る。彼らは、タイパを非常に重視する傾向がある。動画は倍速視聴。情報はSNSで入手。テレビは家にない。新聞はコスパが悪いので読まない。一方、昭和の楽曲はかえって新鮮なので、時々聞くようだ。
 こうしたデジタルネイティブ世代への読書指導は、本を読めというだけでなく、あらゆる手を尽くして、積極的に本の情報を発信しなければいけない。
 動画等のメディアを積極的に活用するのが有効だ。有識者会議のある委員からの紹介事例で、最近の生徒の中には、「本の紹介動画を見て読みたくなった。」や「自分で本の紹介を発信したい。」と考える子どもたちが増えているようだ。動画やSNSから関心を持ち、読書につながることに関しては、多くの委員が共感していた。
 また、本は一人で読むものなので、我々世代では共感しにくいかもしれないが、その楽しさや面白さを共有できる仕組みをつくってあげれば効果的だ。今は学校に一人一台端末が普及し、学習支援システムで意見を共有するソフトウェアを活用して、つながりを作っていくことも大事だ。
 本との新たな出会いの場を人が介して演出すること。これには図書館や学校活動の他、書店も含めて、共存しながら取り組んでいかなければいけない。地域の書店を巻き込んでイベントを行って、販売につなげていく取組もよい。
 そして、読書へのアプローチと読書で得た情報の活用を横断的に取り組む必要がある。Z世代は複数の情報を比較して取捨選択することをしない。とても危険なことだ。また、各メディアの特性を理解することができていない。学習指導要領でも新聞の活用は重視しているので、例えば新聞がどのように編集されているメディアなのかなど重要だ。情報モラルへの理解を深めることも大事だ。うまく使えば便利なものなので、自らを守るためにも重要だ。
 読書活動だけ浮島のように指導することもあるが、情報活用の指導に含めて、理解を深めていく指導が大切だ。
 まとめとして、これからの読書活動に必要なことを3点お伝えしたい。①読書指導の一層の充実、②探究学習への積極的な対応、③児童生徒への合理的配慮の必要性



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TEL 086-224-1269 
FAX 086-224-1208 

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